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(公開日2024/12/29)

【TABIPPO】【前編】神の国、島根県・石見に息づく伝統文化~「石見神楽」を訪ねる旅〜
【前編】神の国、島根県・石見に息づく伝統文化~「石見神楽」を訪ねる旅〜 by TABIPPO
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東西に長い島根県。八百万の神が集まる出雲大社のある東の「出雲地方」、銀で栄えた西の「石見(いわみ)地方」。

同じ県内でも両者は別の国のように風土や風習、文化、歴史とことごとく異なるそうです。

それは神へ捧げる舞「神楽(かぐら)」でも同じ。古来、「石見国(いわみのくに)」と呼ばれた島根県西部の石見地方に伝わる神楽もまた出雲地方とは異なる発展を遂げています。

今回は石見地方に息づく伝統文化の中から、石見神楽を訪ねる旅をご紹介します。
 

 

<島根県石見地方でのオフショットご紹介>

本編では紹介から漏れた、島根県石見地方での石見神楽に関するオフショットをご紹介します

 

石見神楽蛇胴製作を担う植田蛇胴製作所
蛇胴製作の第一人者・植田倫吉さんによる、ありがたいお話 from 本編はこちら

石見神楽の花形演目「大蛇(おろち)

あのダイナミックで豪快でしなやかな動きを可能にさせるのが、長さ17mにおよぶ蛇腹の長~い“蛇胴”

その蛇胴製作の名人で第一人者の植田さん、御年90歳(確か)

熱く蛇胴について語っていただきましたが、
後継者について尋ねた途端、スルーされたのが印象的でした(蛇胴については、実質、後継者不足だそうです…)

石見神楽の石州和紙で作られた面(柿田勝郎面工房にて)
石州和紙で作られた驚くほど軽い面 from 本編はこちら

続いて訪れたのが、石見神楽で重要な、神や鬼らの表情を豊かにする“面”

かたどった石膏に何重にも丈夫な和紙を重ねて、ここまでの厚みに仕上げて最後はもったいないけど、石膏をかち割るそうです
石膏を割る方が、いろいろと効率的だとか

しかし、見た目重たそうに見えても所詮和紙なので、実際はだいぶ軽い

なので、石見神楽では面を付けても顔に負担がないことから、二重に面を被って表情を激変させる、なんて演出もあるそうです

石見神楽が歴史上、神職から民間の手に渡って以降、時代のニーズに合わせて変動していく“進化していく神楽なんだ”と面工房の跡継ぎ様が仰っていたのが印象的でした

被ってみた(柿田勝郎面工房)
鬼の面をかぶらせてもらいました! from 本編はこちら

なんと、巨大な鬼の面をかぶらせてもらい記念撮影!

意外にも視界が開けて、軽くて、確かに息苦しくない
さらに、面の中にあるスイッチをONにすればLEDの赤い目が光る仕掛けも

口には煙の仕掛けも仕込めるそうです

石見神楽で欠かせないお囃子
石見神楽で欠かせないお囃子 from 本編はこちら

ホテルまで出張神楽に来ていただいた「久佐西組神楽社中(くざにしぐみかぐらしゃちゅう)」

神楽に欠かせないお囃子(楽器を奏でる方々)ですが、中に小学生の少年が時々眠そうに参加していたのがめちゃくちゃかわいかった

最初に見た演目「鍾 馗(しょうき)」
最初に見た演目「鍾馗(しょうき)」のワンシーン from 本編はこちら

今回の出張神楽で演じていただいたのは「鍾馗(しょうき)」と「大蛇(オロチ)」

1回目は(たぶん)神(スサノオ?)が鬼を退治するお話でしたが、話の内容はともかく、衣裳が圧倒的に豪華

金糸、銀糸を織り込んだ絢爛豪華な衣裳は石見神楽を彩る華であり、なんと一着何百万もするそうです

演目の後、着させてもらいました!
なんか、かつての紅白に華を添えていた美川さんや小林幸子さんらが来ても遜色ない豪華さです

大蛇の演者に話を聞きました大蛇の演者とお囃子に参加していた少年
大蛇の演者とお囃子に参加していた少年 from 本編はこちら

演目終了後、社中の方々とお話しする機会がありました

演じていた方に大蛇を担いでいただき、あのお囃子の少年も一緒にインタビューさせていただきました(笑)

大蛇を巻き付けてみました
大蛇に巻かれてみた from 本編はこちら

大蛇を身にまとって立ち回るのがどんなもんかと、試させてもらいました(わたしではなく、別の関係者が)

重さ約13㎏なので意外といけるそうです

本当に上手い人は、どんなに動き回っても黒子の体を見せないそうですよ

保護猫チョビちゃんと手作りハガキ(勝地半紙工房にて)
勝地半紙工房にて、お手製花ハガキと保護猫チョビちゃん from 本編はこちら

石見神楽に絶対欠かせない、石州和紙(せきしゅうわし)

石州和紙の工房は石見地方にいくつもありますが、
そのうち、長谷地方の勝地集落で作られたのが“勝地半紙(かちぢばんし)”というそう

その技法を伝えるべく活動されているのが「勝地半紙工房」さん

そこで貴重な紙漉きを体験させていただいたのですが、
工房を運営するご夫婦は保護猫活動もされていて、現在16匹も保護猫を飼われているそうです

そんな一匹の鼻ひげ「ちょび」ちゃんに教えを請うたところ、すげなくスルーされました……泣

石州和紙で作られた貴重な羽織
石州和紙で作られた1点モノの貴重な羽織 from 本編はこちら

勝地半紙工房に併設されたギャラリー「風の工房」

そこに展示されていたこの羽織、素材は石州和紙を撚って作った糸で織られたものだそう

いわゆる「石見紙布(いわみしふ)」と呼ばれる服で、水に濡れても丈夫な石州和紙は洗っても破れず、しなやかで、今に残された、と

これ、150年以上前に作られた貴重な一点もの

確かに糸も和紙も、元をたどれば繊維ですが、とはいえ、和紙とは思えない質感でした

紙の原料・楮を蒸す、釣鐘の「甑(こしき)」
紙の原料・楮を蒸す、釣鐘の「甑(こしき)」 from 本編はこちら

工房横に設置された、紙の原料・楮(こうぞ)を蒸すための「甑(こしき)」

石見神楽の花形演目「大蛇(おろち)」の、とぐろを巻く姿もまた、この形になぞらえて「こしき」というそうです

訪れたのはちょうど12月頭
これから、刈り取った楮を鍋に並べて、この甑で蒸し上げる作業が始まる、とのことでした

ぜひ見たかったな…

 

***************

これまでの神楽のイメージというと、

神社に併設された神楽殿で、
ご神事や神社の年中行事にしか見られない、厳かで静かで、能っぽい舞という印象が強かったですが

その概念を覆す、どちらかというと、歌舞伎とか狂言っぽい大立ち回りの石見神楽でした

出張神楽に来ていただいたホテルの宴会会場は、
その狭さと防火設備の関係で、用意された大蛇は4頭(大会場の場合、通常は八股のオロチなので8頭)、煙火を噴く演出も控えられたのですが
それでも観客席に迫る大蛇のジェットコースターみたいな大立ち回りはとにかく圧倒されました

なので、石見神楽はとにかく華と動きが圧巻なので、言葉の壁を超えて外国人は確かに気に入るだろうなぁと、改めて実感

百聞は一見に如かず
ぜひ、島根を訪れたら石見神楽を楽しんでみてください

おしまい

 

 

<All Photos by Mayumi>

 

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