(公開日2025/1/17)

前編記事「神の国、島根県・石見に息づく伝統文化~「石見神楽」を訪ねる旅~」でもふれた通り、東の出雲地方と西の石見(いわみ)地方、両者は隣り合わせの陸続きでありながら歩んできた歴史や文化が異なり、風土や風習、暮らしにまつわるさまざまな面で地域性が見られます。
というわけで、今回は古くからこの地に受け継がれる古き良き町並みや食文化、伝統工芸、そしてそれらをつなぐホテルの新しい取り組みを通じて、石見地方の魅力を再発見します。
<島根県石見地方その2でのオフショットご紹介>
本編では紹介から漏れた、島根県石見地方での石見地方に伝わる文化や歴史、食などに関するオフショットをご紹介します

石見地方の玄関口、「萩・石見空港」の荷物レーンにて
さすがは石見神楽の地
レーンから大蛇(オロチ)の頭が突然流れてきてビックリ(笑)

石見地方の郷土料理「うずめ飯」
ごはんの下にいろんな具材を「うずめ」るから「うずめ飯」
その定食の付け合わせて出てきたのが、たこ刺しみたいな見た目の「炙り刺身こんにゃく」
片面を炙って、見た目を本物の魚に見立てた、昔の生活の知恵がはたらく郷土料理だそうです
弾力があって、普通に美味しかった

山陰の小京都津和野で有名な蔵元「華泉酒造」さん
酒蔵見学の後は、お待ちかねの飲み比べテイスティングタイム
3種のフレーバー(プレーン、ゆずベリー、まめ茶)の甘酒も展開されていて、ジュースみたいでとても飲みやすくて美味しかった
甘酒は「飲む点滴」とまで形容される栄養ドリンクだけに人気ありそう

“津和野のおいなりさん”、こと「太皷谷稲成神社」
お参りの際、お稲荷さんへのお供え物として捧げる、油揚げとローソク(200円)
お稲荷さんに本物の油揚げをささげるお参りの仕方は、ありそうであんまり見かけないですよね
ちなみに、太皷谷稲成神社の「皷」の部首のつくり(右)は、よく見ると「支」ではなく「皮」で、ご指摘を受けてはじめて気づきました

益田市で最近話題のクラフトビア工房「高津川リバービア」さん
社長の上床さんは生まれも育ちもこの地にゆかりはなく、
でもご縁あって、この地に惚れて移住を決意し、会社も辞めて開業したそう
めちゃくちゃお話し好きで陽気な上床さんは、もとお堅い国家公務員
そして全国商工会議所女性会連合会の第23回『女性起業家大賞』スタートアップ部門優秀賞にも選ばれたデキる女性です

今回宿泊したのは、益田市に誕生したスタイリッシュなホテル「MASCOS HOTEL」さん
ホテルのいろんなところに地元の良さや技を盛り込んだ“クラフトホテル”として注目されていますが、
温泉や部屋も良かったけれど、とにかくレストラン「MASCOS BAR&DINING」の食事が絶品でした!
これはディナーで出された前菜メニューの一つ「益田産柿モッツァレラ」
柿とモッツァレラチーズって合うんですねぇ
クラフトビールとも合いました
コースは基本、地産地消にこだわった、和テイストを盛り込んだ多国籍(イタリアンもあればメキシカン、和食もあり)創作料理コースでした(一人3950円)

ちなみに、MASCOSさんの朝食ブッフェ
品数そのものはそれほど多くないですが、
一つ一つが、デパ地下のお惣菜やさんで食べるような、丁寧かつクオリティの高い家庭料理のラインナップ
確か、地元の人気店のスタッフをホテルに招いて始めた、と聞いた気がします

組子細工で有名な浜田市の「吉原木工所」さん
外資の大手自動車メーカーのショールームや超有名ブランドショップにも商品が採用されているほどの人気工房です
工房のショールームには、200万円はするという高価な組子細工のテーブルや、畳一畳分はある組子細工でできた特大の桜島がありました…
もともと納品したもののレプリカだそうですが、その精巧さに脱帽です

高級魚で知られるノドグロですが、実は島根浜田市の特産
なので、浜田市ではノドグロを使った加工食品が想像以上に数多く展開されていました
関東にいるとノドグロを見る機会は、居酒屋・料亭などで出される焼き物や煮物ぐらいですが、こんなにいろいろあるんだ…とはじめて知りました
ふりかけとか粉末のだしとか人気だそうです
今回紹介した「シーライフ」さんの商品も「はまだお魚市場」にもたくさん並んでいます

島根の一級ブランド豚「芙蓉ポーク」
それを贅沢に使用したソーセージづくりが体験できる「ケンボロー手づくりハム工房」にて
大人の調理実習みたいで作業自体はとても楽しかったですが、
とにかく作り過ぎて、試食で皆腹いっぱい
その日のホテルの夕食で、サイドメニューとしてホテルの方にわざわざ調理してもらいましたが、
もれなく余ったので、宿の従業員の皆様にもプレゼントしました……

島根が世界に誇る魚介の練り物を提供する「若女食品」さん
実は、ロングセラー商品という「貝柱風味フライ」や「かに風味フライ」はこのときはじめて知ったのですが、
(イヤ、名前を知らないでお弁当に入っていたかもですが…)
食べてびっくり、ホンモノっぽい食感、味わいと美味しさにびっくり!
ちなみにおでんネタの韓国における輸入シェアは同社がダントツだそうです
韓国のおでんでは知らず知らずに日本の若女食品産のものを食べてるかもですね
そして、新しく生まれたイメージキャラクターの「わかめちゃん」(仮)がかわいい

石見の伝統工芸の一つで知られる陶芸「石見焼」
その窯元で知られる「嶋田窯」さんの工房では、
息子家族、孫と三代揃った家族経営で、
伝統工芸にありがちな後継者不足とは無縁、かつ必要な粘土もまだまだ自分の庭にあって、しばらくは安泰、というなかなか頼もしい工房でした
嶋田窯さんのサイドテーブルは「タイム&スタイル」で多く受注を受けていて、かなり高価だそうです…(95,700円もした…)
***************
島根というと、これまでは出雲あるいは隠岐方面が多かったですが
今回は縁あって石見地方をガッツリ回ることができて、なかなか興味深い取材旅でした
特に、同じ県内でも石見と出雲では風習も人柄も歴史も大きく異なって、とにかくお互いの県民意識が違う……と非常にユニーク
(まぁ京都でも東京でも、どこでもそんなもんか)
とはいえ、やはり知名度的には出雲が圧倒的に勝る島根県では、客足が伸びにくい石見
せっかくできた萩・石見空港も危機的状況とのことで地域一丸で利用促進している(確か行政から補助金も出てる)と聞いて、ぜひこの記事が微力ながらもその一助になればいいな、と思います
おしまい
<All Photos by Mayumi>
<関連記事>