■ スポット名:モーニング・グローリー(Morning Glory Cloud)
■ 訪問国地域:西オーストラリア、バークタウン Burketown, Queensland, Australia ※文中の情報は2016年10月現在のものです
<バークタウンの所在地>
その聖地が、オーストラリア・クイーンズランド州の片田舎バークタウンです。
今回は、モーニング・グローリーを目撃するまでのバークタウン滞在記録をご紹介します
昔、某旅番組でモーニング・グローリーの存在を知り、
絶対この目で見るぞと心に誓って以来、念願叶って西オーストラリアへ
モーニング・グローリーとは、毎年9月~10月の秋、一定の気象条件がそろった時にだけ発生する幻の巨大雲
そんなわけで、一か八かのギャンブル要素がきわめて高い旅となりました
バークタウンは、モーニング・グローリーの発生率がもっとも高い場所といわれ、
世界中の雲乗り(グライダー)たちが憧れる聖地
毎年この時期は、多くのグライダーが集結します
今回はケアンズからレンタカーを借り、一路、バークタウンへ
今回の相棒は日本製SUZUKIのSwift(スウィフト)ちゃん
9日間レンタルで〆ておよそ4万円程度
海外レンタカーは安い・・・(オーストラリアのガソリン代はそーでもない)
ケアンズからバークタウンまでは片道約900㎞の道のり
「サバンナ・ウェイ(Savannah way)」をひたすら走ります
さすがに一足飛びには行けないため、途中キャラバンパーク(オートキャンプ場)を探すも何故か休業中(泣)
途方に暮れ日も暮れて、
仕方なく、「マウント・サープライズ(Mount Surprise)」という小さな村を通りがかった時見つけた公衆トイレのある小さな休憩所で車中泊することに
10月下旬、秋の夜長といえども蒸し暑さがこたえるオーストラリア、
押し寄せる蚊と闘いながら、初日の車中泊をやり過ごしました
しかし、公衆トイレは驚くほどきれいで快適
ただ、衝撃的なほどでかい蛾が天井を舞い、
どこからともなくあらわれた巨大なカエルが便器にひょっこりいたりで、さすがオーストラリアだと思いました
(びっくりして私が飛び跳ねた)
やがて夜明けがやってくる
人と牛が起き出す前に出発です
「サバンナ・ウェイ」というだけあって、道路はときどき土煙をあげる荒野の未舗装道路
二駆の小型普通車にアウトバーンはなかなかしんどい
すると、牛を引き連れたカウボーイらに遭遇
映画のワンシーンのような光景にワクワク♪
おびただしい数の牛の大行進
互いの安全が確保されるまで、道の真ん中でしばらく待機
しかし、オージー牛は霜降りの日本の牛と違って、骨ばっててごつい
見慣れない白い鳥の群れが一斉に羽ばたたく
この大自然のスケールを肌で感じられるのもオーストラリア・レンタカー旅の醍醐味
また、オーストラリア名物と言えば、荒野に広がる巨大アリ塚
郊外に車を走らせると、こうした異様な光景に出くわします
大小様々、人の背丈にもなる巨大なものもあったり、
これをあの小さな小さな蟻たちが地道に作り上げたのかと思うと感慨深い
そして、極めつけはカンガルーとワラビー
(たぶんこの子はワラビー)
日本でカンガルーとワラビーは動物園のアイドルですが
オーストラリアでは害獣に近いほど、道路にわんさか飛び出してくる
はじめは「カワイー」なんて余裕もありますが、1時間も走ればすぐに見慣れて、むしろ出てこないでと思うようになります
カンガルーやワラビーは、警戒心が強く決して人間に近づいてこない割に、車に対しては無防備
特に日が落ちて視界不良になってくると、
スピードを上げて走っている大型トラックや乗用車に無残にも轢かれてしまい、哀しい末路に
でもこれもまた、残酷なようですが、オーストラリアの名物
このカンガルーはまだ轢かれたばかりで形がキレイですが、
写真には撮れないような、“かつてカンガルー(あるいはワラビー)とよばれしもの” の肉塊になっていることが多い
真夏日は灼熱の太陽のもと熱されたアスファルトで、死肉のバーベキュー状態
鼻が曲がりそうなほど悪臭が放たれます
ちなみに、ときどき野良ラクダや野良馬もそんな状態のものがあります
オーストラリアではお金払ってカンガルー見たり触ったりする施設がありますが、郊外出ればくさるほど会えますよ
(ふれあうことはできないけど)
ようやくバークタウンに到着!!
900㎞って言ったら、東京から山口までの距離ですよ!
我ながらよく走りました(帰りもこの距離かと思うと、ウンザリですが)
今夜はバークタウン唯一のキャラバンパーク(オートキャンプ場)にて宿泊
★Burketown Caravan Park
http://www.burketowncaravanpark.net.au/
バークタウンは200人程度の人口の小さな小さな村レベルの社会
限られた宿泊施設しか有りません
この時期は、一年に一度、世界中からモーニング・グローリー目当てに観光客が押し寄せるので
事前に予約していった方が正解です
ゲストハウスなどは有りません ※2016年現在
ちなみに、バークタウンは隣町まで軽く200㎞はあります
ちょっと隣町に行ってくる…ではきかない距離です
オーストラリアには日本みたいに車中泊できる快適な道の駅はありません
宿泊問題は要注意ですね
バークタウン滞在初日は様子見で車中泊
オーストラリアは意外に(特に田舎ほど)宿泊費が高いのです
駐車スペースと共用シャワー&トイレ、キッチン利用で1泊AUD29(約2400円)※2016年10月当時
共用設備は非常に清潔で快適で申し分ないのですが、
問題は車中泊の場合、10月下旬でも外が蒸し暑く、とにかく蚊が多いこと
ケアンズで安テントでも買ってくればよかったとひどく後悔しました
一応、ここはバークタウンの目抜き通り
200人程度しか住民のいないバークタウンでは、30分もあれば散策が終わってしまいます
★Burketown Shire council:
http://www.burke.qld.gov.au/
とにかく何もない!
町唯一の娯楽ともいえるパブレストランが1軒、
町唯一のカフェはメニューも少なく、WiFiは有料、そして夕方早く閉まってしまいます
さらに町唯一のキヨスク程度のミニスーパーは郵便局と併設で17時に閉店
その横には町唯一のガソリンスタンド1軒ある程度です(これは24時間セルフ、要クレジットカード)
そして、モーニング・グローリーは、基本早朝のみ発生
というわけで、バークタウンでは、日中~朝までの長い時間、いかに暇をつぶすかが課題になります
何もないど田舎だと思っていたけど、
調べてみると、意外にちょこちょこと見どころがあることが判明
その一つは、釣り
モーニング・グローリー以外に訪れる観光客のお目当ての大半は釣りだそうです
そのため、キャラバンパークの受付にはいろんな釣り道具が販売されていました
次に、バードウォッチング
近くを流れる川や湿地帯に珍しい野鳥が飛んでくるようです
暇つぶしに川を訪れると、サギのような白い鳥の群れがたくさんたむろっていましたが、
警戒心が強く、あえなく逃げられました
超望遠レンズか双眼鏡が必要ですね
そして夕方ごろになると、どこからともなく湧き出るワラビーたち
道路にも公園にも人んちの庭先に無法地帯に飛び回ります
でも、決して近寄ってきてはくれないので基本スルー
こうして、バークタウンの初日が終わりました
バークタウン滞在2日目
早朝5時半起きで草原に立ち、モーニング・グローリーを待機するも発生する気配が1mmもなく……泣
モーニング・グローリーは、早朝から9時ぐらいにかけて発生するもので、
午前10時位までに発生しなければ、その日一日はどうあがいても発生しないものらしいです
キャラバンパークのオーナーのおばちゃん曰く、
わたしが訪れる少し前に日本人の男性がわたしと同様、モーニング・グローリーを見るためだけにここに3週間滞在して、たった1度だけ奇跡的に見れていたわよ・・・と屈託なく話す
「彼が3週間で1度きりなら、わずか5日間の滞在で目撃できるのか?!」という、とてつもない不安がわたしを襲います
本日は空振りだったので、仕方なく、町唯一の村役場兼図書館を訪問
まちの図書館では唯一の無料WiFi&インターネットが利用可能です
ケアンズで購入したSIMカード(Vodafone)がバークタウンでは使用できないことが分かり、途方に暮れていたので本当に助かりました
(あとでわかりましたが、クイーンズランド州ではTelstra社のSIMでないと使えないので要注意)※2016年当時
ここの司書さんにバークタウンの見どころを教えてもらい、ここから徒歩10分のところにボア(温泉穴)があるわよ!とのことで訪ねてみました
確かに、町の中心から徒歩10分のところにポツンとそれはありました
The Burketown Boreという名の、掘り出し井戸のようです
井戸と言っても、湧いて出てきたのは温泉
1897年に720m近くも穴を掘って温泉を掘り当てたものの、調査の結果、湧き出すお湯は何の用途にも適さず、
1940年代から60年代までは温水シャワー施設として運営されたこともあったようですが、温度調節が難しかったのか、結局廃業に至ります
それ以降はほったらかし状態で、100年近く放置していたら、びっくりするような異形な姿になっていた、というオチ
これが、バークタウン・ボア(温泉穴)
硫黄成分やミネラル豊富なお湯は独特な極彩色の光景を生み出していました
この光景、アメリカ・ネバダ州で有名なフライング・カイザーに似てる
フライング・カイザーは、極彩色に彩られたオブジェのような、
この世のものとは思えない異次元な姿が一部のマニアで有名なスポット
バークタウンに来る直前、フライングカイザー見たさに米国ロスからわざわざ片道900km 近く車を走らせ訪れたのに、私有地ゆえに立入禁止で遠すぎてほとんど見えなかったという苦い経験をしていたので、
思いがけず似た風景を見ることができて、少し救われた気がしました
お湯の温度は約68℃、直接触ったら火傷します
ただでさえ灼熱のオーストラリアの地で、温泉の周囲はおそろしく高温で、何より硫黄臭がきつい
しかし、何とも言えない極彩色の光景は、遥か彼方にあるエチオピアのダナキル砂漠を彷彿とさせます
こんなにインパクトのある風景が、人知れず埋もれている事実に衝撃です
(写真には写ってませんが)このボアの周辺で、どうも野犬か何かに野鳥が食い殺されたようです
羽がむしり取られたように広範囲に散在していました
この異様な光景と相まって、不気味さアップ
なかなか興味深い光景に出会えてちょっと満足しつつ、こうして2日目の日が暮れていき、長く退屈な夜が訪れます
せめて本でも持ってくればよかったとひどく後悔しました…
バークタウン滞在3日目
本日も快晴、しかし疲れが祟ったのか、体調は絶不調
倦怠感、咳、鼻水…
とはいえ、モーニング・グローリーを見逃すわけにはいかないため、ひとまず5時半に起き、定位置へ向かう
しかし、美しい日の出を拝んだだけで、本日も空振りに終わる
ワラビーらがあざ笑うようにぴょんぴょんぴょんぴょん、草原を走り去っていく……
疲れがピークに達したのか、激しい咳と鼻水が止まらず、体調がどんどん悪化
すがる思いで、空きが出たコテージに移ることに
空いているコテージがファミリー向けしかなく、仕方なく一人で4人部屋をレンタル
(それでも1泊8,000円程度、思ったよりもリーズナブルだった)※2016年当時
キッチン・冷蔵庫・レンジ・給湯器、エアコン付き
予想を遥かに超えた充実装備の快適性
コテージに移るやいなや、バタンキューでした
体調を崩していても、そこは貧乏性の悲しい性(さが)、
何かをしていないと落ち着いていられず、暇つぶしに町の郊外を再び散策
ガイドマップに紹介されていた、
バークタウン指定の産業遺産「Boiling down works」を見学に
産業遺産なのに野ざらし状態…
これは、てっきり何かの掘削機かと思ったら
何かを調理するための巨大な煮沸機械のようです
独特の雰囲気が漂う世界
ここまで鉄サビだと、産業遺産というより産業廃棄物??
ここは、メインの道路から外れてアウトバーンの道なき道を進んだところにあるので、観光客もほぼ訪れない、知る人ぞ知る穴場の観光スポットです
(むしろバークタウンにあるもの全部穴場かもですが)
さらに郊外に車を走らせるとまちを流れるアルバート川に突き当ります
波止場にはボートクルーズの看板がありましたが、釣り専用の様子
しかし、川もきれいではないし、景色的に見どころもなく、ただ、虚しく暑いだけでした
バークタウンのマスコットキャラクターが実はワニなので、もしかすると川にワニも住んでいるかもですね
何気なく地平線を眺めていたら、彼方に、ユラユラと蜃気楼のようなものがゆらめいていました
望遠レンズがなかったので、ちょっと分かりにくいですね
・・・そうして、体調不良のまま、3日目が過ぎていきました
バークタウン滞在4日目
本日も5時半起きで草原のベストポジションへ向かい、9時過ぎまで粘るも1mmも現れる気配なく、この日も空振りに終わる
共用キッチンで知り合ったご夫婦がここの常連さんで、
旦那様がモーニング・グローリーに乗るグライダーオーナーで、奥様は気流の流れや湿度を予測する賢いアプリを見せてくれて、
「おそらくこの状況だと明日頃には発生するわよ。モーニング・グローリーは湿度が高まってくる週後半が発生しやすいから」とありがたい情報を提供してくれました
その言葉を信じつつ、バークタウン滞在最終日の過ごし方を模索します
快適なコテージに移動できたとしても、
体調はなかなか改善せず、もはやゲホゲホ喘息状態
とはいえ、体調が悪いからと言ってじっとはしていられない性分、本日もお約束の外出
本日は、バークタウン唯一の飛行場へ
まち郊外にある小さな飛行場は、ケアンズから小型セスナによる就航便が出ています
でも基本的にはモーニング・グローリーの雲に乗るためのグライダーメインの飛行場です
ここに来られる方の多くは、自前のグライダーを持ち込むようですが、
遊覧飛行のセスナ社がいくつかあるので、一般の方でも遊覧可能(要事前予約)
ただし、料金がバカ高いし、いつ発生するとの保証もない…
とはいえ、モーニング・グローリーに一度は乗ってみたいですねぇ
バークタウン空港を後にし、目指したのはバークタウン郊外にあるという「塩の平原(Salt Pans)」
村役場の方からは、塩の平原へ行くには普通乗用車はお勧めできない、とやんわり制止されたのですが、そう言われると好奇心が勝ってしまって訪れることに
車の轍(わだち)をトレースするように慎重に走っていると、確かに塩を吹いたような白い平原が見えてきました
地平線の向こうはおそらく太平洋です
塩の平原は130平方キロメートルと想像以上に範囲が広く、日本でいえばちょっとした市のサイズぐらいありますね
乾燥した塩湖にありがちなこの亀甲模様の干からびた感じもいい
なんて、のんきに車を停めて写真を撮っていたら、やがて悲劇が起こりました
なんと、停めてた車のタイヤが地面に沈んでスタック状態に
気づかないうちに、ぬかるんだ場所まで走りこんでいたようです
エンジン全開でふかしてもタイヤが空回りするばかりでなかなか動かず、
もちろんタイヤにかませる毛布やダンボール、板も積んでいない
時刻は夕方17時を回り、それでもまだ日は高く、日差しが強い
噴き出す汗
ここは町の中心から10㎞近く離れており、幹線道路からも外れて、周囲に何もないだだっ広い平原
しかも、自分がここにいることを町の誰にも伝えていない
そして、無情にも電話もネットも圏外
絶望に突き落とされ、天を仰ぎ、スタッフの制止を聞かなかった自分を激しく呪いました
が、後の祭り
車を置いて歩いて戻って救援を呼ぶかなど思いを巡らしましたが
(スマホのGPSはつながったので、オフラインの地図を見ながらかろうじて帰ることは可能)
車をしきりにふかしていると、1分に数㎝ほど前進していることに気づく
スコップもないので、素手で何度もタイヤの泥をかき分けて
全身泥まみれになりながら、エンジンフル回転で格闘すること約1時間
何とか固い地盤に乗り上げることができ、奇跡の脱出を図りました
写真でいうと、左奥の黒い轍が格闘した証拠
ひさびさに絶体絶命感を味わいました
頑張ってくれたSwiftちゃんは、その後エンジンの調子が一瞬おかしかったのですが、しばらくして元に戻りました
(でもエンジン吹かせすぎると良くないんですよね……)
命拾いしてまちに戻ってからは、最終日ということもあり、最後に郊外にあるセメタリー(墓場)を見学
広々とした草原にポツンポツンとお墓が点在していました
さっきまでとは打って変わって、実にのどかな光景
墓地の中を無数のワラビーらが飛び跳ね回ります
墓地までも実に牧歌的で、オーストラリアらしい風景
とりあえず疲れ果てて宿に戻り、
4日目の最終日の夜も虚しく過ぎていきました
終わり
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最後までご覧いただきありがとうございました
5日目ラストチャンスの朝の模様はこちらで▼▼▼