Compathy Magazine

(公開日2017/11/01)

※Compathyサイト閉鎖に伴い、同サイトに寄稿した記事を転載したものです

 

【Compathy Magazine】 【閲覧注意】「地獄の白寺」と「黒い家」! タイ・チェンライの巨匠がおくるカオスな世界へようこそ!
【閲覧注意】「地獄の白寺」と「黒い家」! タイ・チェンライの巨匠がおくるカオスな世界へようこそ!

 

こんにちは、Compathy MagazineライターのMayumiです。

観光立国タイ王国にあって、意外と目立たない存在の、タイ最北の地方都市・チェンライ。

しかし、ここにはアートの巨匠がおくる、ちょっと不気味でどこか神々しい、天国と地獄が入り混じったカオスの世界が広がるお寺が存在します。

今回はチェンライにある奇妙な観光スポットについてご紹介します。

※記事内に一部、刺激的な写真が含まれていますのでご注意下さい。

 

タイ最北の街「チェンライ」とは

ワット・プラケオ’(タイ・チェンライ)

 

ラオスとミャンマーの国境に接するタイ最果てのまち・チェンライ。

タイ第2の都市・チェンマイから約200km離れたチェンライは、都会の華やかさとは少し無縁の、どちらかというと地味でのどかな片田舎といった印象のまちです。

チェンライといえば、タイでもっとも格式高いとされるエメラルドブッダのレプリカが安置されたワット・プラケオ(エメラルド寺院)があることでも知られていますが、それより何より、実は飛びぬけて異彩を放つ、2つの観光スポットがあります。

それが、世界に誇るタイ芸術の巨匠2名が生み出した、世にも奇妙でカオスな寺「ワット・ロンクン(Wat Rong Khun)」と美術館「バーンダム(Baan Dam Museum)」です。

その独特の世界観を是非お楽しみください。

 

ワット・ロンクン: 通称「ホワイトテンプル」またの名を「地獄寺」

ワット・ロンクン’(タイ・チェンライ)

 

チェンライの中心から南へ約14kmに位置するワット・ロンクン。

まばゆい黄金に覆われたタイのパゴダや寺院が一般的な中で、ワット・ロンクンはかなり異質なほど、寺院全体が純白をまとっています!その姿から、通称「ホワイト・テンプル(白い寺)」と呼ばれています。

この寺は新進気鋭のタイ人アーティスト、チャルムチャイ・コーシッピパット(Chalermchai Kositpipat)氏によって1997年に創建、今なお拡張工事が進んでいます。彼の私財を投じ、寄付によって賄われているこの建設は、完成予定が約90年後と、その途方もない壮大な計画すら異彩を放っています。

 

ホワイト・テンプル(白い寺)の意味

ワット・ロンクン「救いを求める手」’(タイ・チェンライ)

 

コーシッピパット氏によると、白は仏陀の清浄さを意味し、金は邪悪な欲にまみれた人間が持つ色とされています。

そして純白寺院の本堂へと続く道は輪廻転生を示し、入口はあらゆる欲にまみれた現世(うつしよ)、道の下は地獄に堕ち救いを求める無数の手、渡った先にようやく観音菩薩の天上界が表現されています。

 

撮影禁止の本堂内の様子

ワット・ロンクン’「業にとらわれた人」(タイ・チェンライ)

 

タイ仏教美術とシュールレアリスム(超現実主義)が融合した現代ならではのこの純白寺院。

一つ一つが実に精巧でリアル、美しくもおどろおどろしい、不気味というのが正直な感想のワット・ロンクン。
しかし、撮影禁止の本堂内の壁画には、有名映画や漫画・アニメ、ネズミー国や実際の著名人に至るまで、ありとあらゆるヒーローが大集結しています。

ついでに風刺を効かせた時事ネタまでが加わって、著作権を一切無視したブラックユーモアあふれるユニークな壁画が展示されています。そうした大人の事情で撮影禁止なのかもですね。

 

バーンダム・ミュージアム: カオスな死生観漂う「黒い家」

黒い家・バーンダム(タイ・チェンライ)

 

チェンライ市街の中心から北へ約13km、寂れた村の一角にひっそりとたたずむ美術館が「バーンダム・ミュージアム」です。

「バーン(Baan)」はタイ語で「家」、「ダム(Dam)」は「黒」を意味し、通称「Black House(黒い家)」と呼ばれています。

創設者のタワン・ダッチャニー(Thawan Duchanee)氏とホワイトテンプル創設者であるコーシッピパット氏は師弟関係にあり、ダッチャニー氏もまた前衛美術の革新的アーティストとして世界に名を馳せた美術の巨匠のひとりです。彼が没する2014年まで、この家を制作し続けたとされています。

 

建築様式とギャラリー

高床式倉庫スタイルの展示が特徴のバーンダム(タイ・チェンライ)

 

敷地内は大小40ほどの黒い建物で構成され、主にタイ北部で見られるラーンナー様式の高床式家屋が多くみられます。

屋根には水牛の角のような鋭利なオブジェが施され、建物の柱や扉には精巧な彫刻が刻まれています。

さらに床下までもギャラリー化していて、猛獣系の巨大な毛皮や頭蓋骨、骨格標本などが所狭しと展示されています。

 

カオスな展示内容

(タイ・チェンライ)

 

バーンダムの展示内容はまさにカオス。

素朴な仏像があるかと思えば、東南アジア系の神像もあり、理解しがたい現代アート作品もあれば原始的なアフリカンアートもあり、ストーンヘンジのような宗教めいた置石もあれば枯山水のような石庭もあり、何より特徴的なのはおびただしい数のワニ・牛・熊など猛獣たちの毛皮や骨格標本の数々。

彼の死生観は凡人には理解しがたいほど独特で、強烈な個性とパワーを放ち、観るものをひきつけてやみません。

 

おわりに

厳格な仏教寺院、仏教美術が多いタイにあって、現代アートを取り入れた異彩を放つ二つの仏教的スポット。

バンコクから北へ約800kmとやや遠いですが、タイ古来の仏教寺院も楽しみつつ、ブラックユーモアと風刺の効いた新たなタイ仏教芸術を楽しみに是非チェンライを訪れてみてください。

 

執筆後記
白の地獄寺に黒の家
人間界と畜生道
師匠と弟子

相反する関係性で作り上げられた世界

不気味なほどリアルで
ゾッとするほど美しく怖い

芸術家の考えることは
実に深く
実に分かりにくい

でも
お堂に入ったあとの
著作権無視のキャラクター大集合には
心和みました

終わり

 

<All Photos by Mayumi>

 


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